Web3は、インターネットの次世代技術として注目を集めています。分散化された、より自由で透明性の高いインターネットの実現に向けて、いくつかの重要な技術が支えています。今回は、Web3を構成する主要な技術スタック—IPFS（InterPlanetary File System）、ENS（Ethereum Name Service）、そしてスマートコントラクトについて、これらの技術の仕組みやその役割を解説します。
1. IPFS：分散型ファイルシステム
IPFSとは？
IPFS（InterPlanetary File System）は、分散型のファイルストレージシステムであり、Web3のインフラを支える重要な技術の一つです。従来のインターネット（Web2.0）では、ファイルやデータは中央集権的なサーバーに保存されます。しかし、IPFSではファイルを複数のピア（ノード）に分散して保存し、各ピアがそのファイルの一部を持つことで、データの分散管理を実現します。
IPFSの仕組み
IPFSでは、ファイルをアップロードするとき、まずファイルが「コンテンツアドレス」として識別されるハッシュ値に変換されます。このハッシュはファイルそのものに基づいており、内容が変更されるとハッシュも変わるため、ファイルの整合性を確認することができます。この方法により、ファイルのバージョン管理やアクセス管理も効率的に行えます。
IPFSの特徴的な点は、データを分散ネットワーク上の複数のノードに保存するため、中央サーバーがダウンしてもデータの消失リスクを避けられる点です。また、コンテンツの取得は、最寄りのノードから行われるため、速度と効率も向上します。
IPFSのWeb3での役割
Web3の分散型アプリケーション（DApps）では、IPFSがファイルストレージとして利用されます。例えば、NFTのメタデータや画像、動画などのデジタルコンテンツは、IPFSに保存されることが一般的です。これにより、コンテンツが中央集権的なサーバーに依存することなく、永続的にアクセス可能となります。
2. ENS：Ethereum Name Service
ENSとは？
ENS（Ethereum Name Service）は、Ethereumブロックチェーン上で動作する分散型ドメインネームシステムです。従来のインターネット（Web2.0）では、ドメイン名は中央集権的な管理機関によって管理されていますが、ENSはその分散型バージョンとして、Ethereumネットワーク上でドメイン名を発行・管理することができます。
ENSの仕組み
ENSは、Ethereumブロックチェーンを利用して、人間が理解しやすい「.eth」などのドメイン名を、Ethereumアドレスやスマートコントラクトのアドレスに結び付けます。例えば、通常のEthereumアドレスは長く複雑な文字列ですが、ENSを利用することで、「yourname.eth」といったシンプルな名前に変換することができ、これを使ってEthereumの送金やDAppの利用が可能になります。
ENSは、分散型であり、ドメイン名の所有権がブロックチェーン上で管理されるため、中央集権的な管理者がいません。これにより、ドメイン名が検閲されることなく、永続的に存在し続けることが保証されます。
ENSのWeb3での役割
ENSは、Web3においてユーザー体験を大きく改善する役割を果たします。Ethereumアドレスが難解で使いにくいという問題を解決し、簡単に覚えられるアドレスで取引やDAppの利用ができるようにします。また、ENSは分散型ウェブサイトのアドレスとしても利用され、Web3のインフラがより使いやすく、信頼性の高いものになる手助けをしています。
3. スマートコントラクト：自動化された契約の実行
スマートコントラクトとは？
スマートコントラクトは、Ethereumをはじめとするブロックチェーン上で実行される自動化された契約です。従来の契約は、契約書に基づいて、契約内容を履行するために仲介者が必要でしたが、スマートコントラクトでは、プログラムコードに基づいて契約が自動的に実行されます。
スマートコントラクトは、契約条件が満たされた場合に自動で実行されるため、第三者が介入することなく、契約内容が確実に履行されます。これにより、取引の透明性が高まり、トラブルを未然に防ぐことができます。
スマートコントラクトの仕組み
スマートコントラクトは、特定の条件に基づいてプログラムが実行される仕組みです。例えば、ある条件が満たされた時に、契約に基づく支払いが自動で行われるなどです。このような契約はブロックチェーン上に記録され、不正な改ざんができません。
スマートコントラクトのコードは、Solidityなどのプログラミング言語で書かれ、Ethereumなどのプラットフォーム上で動作します。契約が正しく実行されると、その結果がブロックチェーンに記録され、誰でも検証できるようになります。
スマートコントラクトのWeb3での役割
Web3では、スマートコントラクトがさまざまなDApp（分散型アプリケーション）の基盤となっています。DeFi（分散型金融）のプラットフォーム、NFTの発行や取引、分散型自治組織（DAO）など、スマートコントラクトを活用することで、中央集権的な管理者を排除し、より透明で効率的な取引を実現します。例えば、ユーザーがDeFiプロトコルにステーキングを行う際、スマートコントラクトがその取引を自動的に管理します。
結論
Web3を支える技術スタックには、IPFS、ENS、スマートコントラクトなど、重要な要素が含まれています。IPFSによって分散型ファイルストレージが実現され、ENSがドメイン名の分散型管理を可能にし、スマートコントラクトが自動化された契約の実行を支えています。これらの技術は、従来のインターネットとは異なる、より分散型で透明性の高いWeb3の基盤を築いており、これからのインターネットの進化を牽引しています。